こんにちは、医師のとも 良縁スタッフです。
厚生労働省が2022年に公表したデータによると日本の離婚率は約36%。つまり毎年、国内の結婚している夫婦のうち約3分の1は離婚していることになります。
離婚は、夫婦におけるさまざまな部分に影響を及ぼします。子どもがいれば親権はどちらが持つのか、持ち家があれば所有権をどう分割するのか、あるいは譲渡にするのか。また実務では引っ越しをする必要が出てきたり、仕事を変わらなければならなかったりするケースもあります。そして最も重要なのが、離婚時の財産分与により原則として婚姻中に形成した財産は元パートナーと折半になってしまうことです。
そのため可能な限り婚姻前に離婚時の取り決めをしておくことが望ましいとされています。
「結婚する前から離婚のことを考えるなんて……」と思うかもしれませんが、離婚時のトラブルを最小限にするために、また自分の大切な財産を守るためにも男女ともに離婚の可能性を視野に入れた財産防衛策を身につけておきたいもの。本記事では財産防衛策をいくつかご紹介します。

預金通帳は婚姻前と婚姻後で分けるべし
財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に蓄えた共有財産です。婚姻前に夫婦のどちらかが形成した財産は「特有財産」と呼ばれ、財産分与の対象外となります。女性の場合、婚姻前の個人の貯蓄を預けた通帳があれば、結婚しても旧姓名義のまま残しておくことをおすすめします。特有財産であることがわかりやすく、手続きがスムーズになる可能性が高いからです 。婚姻中に蓄えた財産は、旧姓口座とは別に新姓で新しく開設した口座で管理しましょう。
財産を不動産などで持つのも一案
婚姻中に購入した土地や建物といった不動産、自動車、株式などは、名義に関係なく財産分与の対象となり、原則半分ずつ分け合うことになります。しかし不動産は、そのままでは分割できません。分与方法としては、「売却して現金化する」あるいは「夫婦の一方は住み続けて、もう一方は半分に値する現金を受け取る」のどちらかを選択します。
前者の場合、お互い受け取る金額が明確でトラブルになりにくいと言えます。ただし、住宅ローンが未完済の場合、注意が必要です。売却額がローン残高を上回れば、全額返済し残ったお金を財産分与すれば完了です。しかし逆に下回れば、売却と合わせて全額返済のために貯金を切り崩さなければなりません。
後者の場合、不動産鑑定士などに不動産価格の調査を依頼し、不動産に居住しない人へ分与割合に応じた金額が支払われます。住み続ける側になる場合、新しい家の手配や子どもの転校など生活環境を大きく変えずに済む反面、元パートナーに支払うための多額の現金を用意しなくてはなりません。またローン残高がある場合、その支払いは誰がしていくのか離婚時の調停で決める必要があります。
財産を不動産で持つ場合は、こうした離婚時のメリット・デメリットをよく理解しておくことが大切です。
また、合法性とは断言できませんが、お相手に把握されていない財産は請求されないという現実もあるため、暗号通貨や海外不動産、金の延べ棒など金の現物、タックスヘイブンなどの海外の金融機関での預貯金など、把握されづらく、調査も難しい形態で財産を保有される方が多いのも事実です。自分自身もだまされていたということがないようにしっかりとリサーチをして望む必要もあります。
子どもに渡しておく方法も
離婚時の財産分与において、子どもへ贈与のために受け渡した財産は対象外となります。「ゆくゆくは自分の財産を子どもへ……」と考えているのであれば、あらかじめ子どもに渡しておく方法もあります。
ただし、年間110万円を超える贈与には10~55%の「贈与税」がかかります。そのため、毎年税金がかからない範囲で贈与する(もともと110万円超の贈与を決めていて、それを分割して定期的に贈与する場合は贈与税の対象となることがあります)。もしくは教育資金や結婚・子育て資金、住宅取得等資金の贈与などは、一定額まで非課税措置が適用できる場合があるため、そうした制度をチェックしてみるといった方法を検討してみるのも一案です。
子供の教育費に渡したはずのお金が、お相手の遊興費に使われてしまうということを防ぐためにも、教育資金贈与信託や投資用の不動産など、子ども自身の名義で残しておくのも一案です。
別の話になりますが、不幸にも早くに自分が亡くなってしまった場合にも、医学部費用を渡すことができます。(不動産の場合は団体信用生命保険により返済が免除されれば、自分の死亡時にはローン返済のない不動産を子供に託せます。ワンルームであっても、売っても貸しても住んでも、医学部進学のサポートになることでしょう)
ちなみに離婚時の財産分与でやり取りされる財産には、基本的に贈与税や不動産取得税といった税金はかかりませんので、金額によっては財産分与で受け取る方が節税になる可能性もあります。
また子どもに事前に財産を渡しておく場合、子どもが成人後に浪費しないように対策を取ることも重要です。例えば、海外の銀行に預けさせる、海外の不動産購入費にあてさせる など、簡単に換金できない方法が望ましいでしょう。
【番外編】婚前契約
少し話がそれますが、離婚時の財産分与トラブルを事前に防ぐという意味では「婚前契約(夫婦財産契約)」も有効です。婚前契約とは、これから夫婦になる2人が入籍前に結ぶ契約で「家事の分担」「財産の管理方法」「離婚後の財産分与」などについて定めるものです。作成方法で法律上の決まりはありませんが、一般的に当事者間で作成する私製証書、もしくは公証役場で公証人を通して作成する公正証書にて締結します。
婚前契約は、婚前に形成した資産を明確にしておきたい場合、夫婦それぞれの能力や役割に応じた適切な分与割合を設定しておきたい場合などに役立ちます。例えば、財産分与においてはたとえ自分の力によって獲得した株式の売却益や、自分の人脈やコミュニケーション力などを使ったからこそ獲得できた高利回りの不動産であっても、その半分を失うことになります。事前にそうした財産については分与の対象としない旨を合意していれば、後でつらい思いをすることはありません。
一方で、結婚前に破局した後のこと、とくに金銭的なことを話題にすると、相手からの信用を落とす可能性があることは忘れてはなりません。また契約内容は途中で変更不可能であること、親権や養育費に関する取り決めは原則できないことにも注意しましょう。
日本ではまだ認知度が低い婚前契約ですが、海外では多くの有名人や富裕層などが締結しています。

まとめ
離婚時の財産分与の際、大切な財産を守るためのさまざまな対策をご紹介しました。
財産分与は法的に定められた権利ですが、きちんと理解している人は意外と少ないと思います。特に収入の高い医師の場合、長い結婚生活の中で多くの財産を築く人もたくさんいます。もちろん、離婚の危機がなければそれに越したことはありません。しかし、何も知らないまま万一破局を迎え、今まで築いてきた財産を過剰に失ってしまうことのないよう、今から正しい知識を身につけておきましょう。
法律や制度は、時代に合わせてつねに見直されています。調べる際は、最新の情報を得ることもぜひ意識してみてください。